医薬品原薬のプロセス開発に於けるスケールアップ -プロセス開発の前に- 医薬品原薬(原薬)のプロセス開発を始めたころ、社内で化学工学の教授から講義を何回か受講する機会があ った。数式が出てくると自分には無理、無理と理解することを諦めていた。しかしながら、原薬のプロセス開発と製造現場を経験して行くと実験室で最適化した操作条件を製造実機で再現できず期待した品質、収率等で中間体・原薬が得られないことがあった。考えてみると、実験室で原薬等の工程操作条件を最適化しているが、製造実機で操作条件が最適化されないままにスケールアップ製造を実施していたためであった。先輩からスケールアップは 10 倍、10 倍で実施すると言われていたが、10 倍のスケールアップでも同様なことを経験したことがあった。このことは、反応条件である撹拌(撹拌数)・伝熱(反応温度)状態が反応生成物の品質及び収量に最も影響を与えることを理解していても、スケールアップに向けてどの様なデータを取ればよいのか、実験室のデータを製造実機で再現するためにどの様に変更すれば良いのか知らなかったからである。実験室で最適化した操作条件を大小の反応槽で同等に再現するためには、「感」ではなく、実験室反応器と製造実機(大小の反応槽)は幾何学的相似形を用い、スケールアップ量(使用する反応槽)に合わせて撹拌と伝熱状態を化学工学の数学的予測計算、操作時間に対する熱安定性の担保、並びに操作原理と相似を確保する必要があるからである。 製薬メーカーでプロセス開発を行っていた時、製造実機での操作条件の検証を前臨床( non-GMP )製造時に現場実験と称して実施したことがあった。しかしながら、現場実験は開発コスト、期間、危険性と廃棄物等の増大を伴うため現実的でなく勧められない。 では、医薬品原薬のプロセス開発に於けるスケールアップをどの様に進めればよいのか? 治験薬・後発品の原薬製造プロセスは、開発の進捗に合わせて原薬のプロセス開発を進めて行くが、品質リスクマネージメントの一環として開発段階に合わせた品質目標、品質リスクアセスメントと実験計画を策定し、その実験計画に従い操作条件の最適化データ取りを行う。取得したデータがスケールアップにそのまま適応できるのか、変更が必要かなどの検証を実施する必要がある。 〇 治験薬・医