医薬品原薬のプロセス開発に於ける晶析操作での結晶粒子径の制御 目次 初めに 1. 晶析に於ける結晶サイズの制御 2. 製造現場での原薬の精製(晶析)工程の操作の流れ 3. 晶析操作、溶解から結晶熟成までの冷却制御パターンと速度 3-1. 過飽和度と粒子径 3-2. 過飽和度と結晶粒子径(粒度分布の関係) 3-3. 種結晶(種晶)誘導の有無と結晶粒子径 3-4. 撹拌速度と結晶粒子径 3-5. 核形成温度と結晶粒子径 3-6. 冷却速度と結晶粒子径 4. 晶析操作の実験室でのデータ取り 5. 附則 . 結晶粒子径を表す用語 初めに 医薬品原薬の晶析操作は、一気に大量の目的物(原薬・中間体等)を精製・結晶化させる操作で あり、結晶の純度、不純物量、不純物プロファイル、結晶多形、結晶癖、粒子径(粒度分布)とろ過性等の品質を決定する重要工程である。その中で、原薬の結晶粒度分布(粒子径)は、結晶多形と同様に、溶解速度と体内吸収( BA )に影響を与える重要な役割を担っている。粒子径が小さな原薬は結晶の比表面積が大きくなるため溶解速度が速くなり体内へ速やかに吸収されるが、結晶径が大きい原薬は比表面積が小さくなるため溶解速度が遅くなり体内吸収が非常に緩やかになる。原薬の溶解速度が異なると体内吸収に差が生じ薬の効き目が悪い、薬効が遅れて現れる、或いは最悪の場合薬効発現に必要な血中濃度に達せず薬効を示さない、或いは溶解速度が速すぎて副作用が出る等の可能性が出て来る。この様に、原薬の溶解速度・溶解度に関わる体内吸収は結晶粒子径(粒度分布、 D50 (メディアン径))並びに結晶多形により影響を受ける(図 1 )。従って、医薬品原薬の粒子径サイズの制御(粒度分布の均質性)は医薬品の効き目に関わっており、新薬では、溶解性が問題となり治験薬の開発を左右することがある。後発医薬品(ジェネリック)では、新薬との生物学的同等性( 血中濃度 - 時間曲線 、溶出試験)が要求される。医薬品として求められる原薬は、シャープな粒度分布と適切な粒度分布(平均径)を持った結晶です。また、結晶平均径が通常より小さい、或いは粒度分布が幅広く微