医薬品原薬のプロセス開発に於ける撹拌のスケールアップ 今回は、今までのプロセス開発並びに製造現場の経験と得た知識から「撹拌のスケールアップ」についてです。 目次 初めに 1 .撹拌のスケールアップとは 2. 撹拌の目的 3 .撹拌のスケールアップは怖くない 4. 撹拌数のスケールアップに於ける幾つかの相似について 5 .では、バッチプロセスで大切な撹拌とは? 6 .バッチ式反応槽で撹拌が大切な操作 15) 7 .反応槽中で流体の撹拌効果を上げる方法 8 .医薬品製造実機に用いられている撹拌翼とその性質 9 .バッチ式反応槽における撹拌のスケールアップ基準 10 .製造実機からの撹拌スケールダウンシミュレーションの実施 11. Pv (単位体積あたりの撹拌動力)一定によるスケールアップ後の撹拌数の計算 1 2 .実験室から製造実機へのスケールアップ例 まとめ、撹拌のスケールアップは怖くない! 初めに、 製薬メーカー並びに原薬メーカーで創薬、医薬品原薬のプロセス開発と製造並びに品質保証に携わって来たが、化学工学を知らなかった。プロセス開発のある時まで、実験室で仕込み方・反応・停止・抽出・乾燥等の各操作条件を最適化すれば原薬が製造(大量合成)できると考えていた。実際、プロセス開発で得た知識と経験と反応(系)様式、並びに実験機の撹拌状態の観察から現場実機での大量合成に成功していた。それはプロセス研究者としての経験と勘と観察、並びの製造現場担当者の判断によって幸運にも反応を乱流域下の撹拌状態で行っていただけのことであったと思っている。社内で別のプロジェクトチームがプロセス開発中に水素添加の不均一系反応を実験機で最適化し、これまでと同様に、スケールアップ製造で反応を実機最大撹拌数で反応を実施させたが、全く進行しなかった事例が発生した。本事例を聞いて、「単位体積当たりの撹拌動力一定」で製造実機の撹拌数を計算すると 50 rpm 足りないことが判明した。反応が全く進行しなかった理由が理解できた。予測計算の撹拌数が達成される様に撹拌機の能力を改善すると反応は実験機と同等の結果が得られた。この時初めて、撹拌がスケールアップに於いて重